2008年11月1日土曜日

大和文華館「崇高なる山水―中国・朝鮮、李郭系山水画の系譜―」



ちまたで噂の展覧会。
大和文華館はやっぱり怖いところだ。
こういう展覧会を東博とか京博でやらずに済ませてきたのは何故・・と思う。

昨日の徳川美術館の展示と好対照をなす中国絵画。
むこうは逸品系でこちらは正統系、なのかな。

李成の作風を最も忠実に伝えるものと目される〈喬松平遠図〉から
根津の牧牛図まであたりの並びは異常な名品揃いで、鳥肌が立つ。
喬松平遠図と有鄰館蔵〈秋山蕭寺図〉は別格の気高さ。
線そのもので、ではなく、線と線の狭間の余白で描写しているという感じ。
だから単眼鏡で見てもなにも見えない。適度な距離をおいて初めて見える絵。
メルロ・ポンティが言ったように、絵が画布そのものにくっついてあるのではなくて、
画布の少し上の空間に浮かんでいる。

大阪市立美術館の〈明皇避暑宮図〉の描写の細かさと、
その細かさをさらに統括する様に、絶妙の均衡を保っている全体観に圧されました。

李郭系の山水画は、シュールリアルそのもの。
異常なまでに細かい描写にもかかわらず、否、細かいからこそ、
画中の空間の背面が見えない。
モティーフの裏に回り込む感じが無い。
だけど、画空間自体には深い奥行きがある。
深い井戸をのぞき込んでいる感じ。
不思議不思議。




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