2008年8月30日土曜日

村田画廊「竹内浩一・村田茂樹ふたり展」


村田画廊に行ってきました。
ふたり展のこと、村田画廊の場所、或いは修羅の・・のfumiさんに教えていただいて。
最寄りの地下鉄の駅(松ヶ崎)からすこし離れているから、自力ではきっとなかなかたどり着けなかったと思う。

竹内先生、村田茂樹さん、おふたりとも画風は近い感じがします。
作品は小さめの大きさ。全部額装だった(と思う)。
竹内先生の方は猿画。かわいい・・。
(先生先生言うてますけどあくまで私淑。)
これまで拝見した経験では、硬質な絵、という印象がありました。が、今回出してらっしゃる絵はとても柔らかい気がする。
描写は変わらずとても細密。
先生の描く猿さんは岡崎の動物園のお猿さんなのかな・・。

村田茂樹さんの作品は、不勉強で今回が初見。
ブロッコリとかお豆さんとか。薄緑が目に眩しい。
すごくすごく繊細な描写が、単純化されたフォルムに包み隠されて、端正な感じ。



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2008年8月29日金曜日

国立国際美術館「モディリアーニ展 Modigliani et le Plimitivisme」 


雨が降ったり止んだりで、大阪はむしむしした暑さ。
不快指数高い気候だったけど、モディリアーニ展は最高に良かった。

モディリアーニ。
この展示を見るまで私がもっていたモディリアーニ像は、哀しくなるくらい貧弱なものだった。
知らないってことは怖いなあとつくづく思う。
有名な人だから、名前だけ頭にこびり付いてて、「知ってる」って思いこんでいたんだと思う。
今回、デッサンと油画の数十点を見て、何も知らなかったことに気付いた。

人物の表情、表現の色、背景の構成、簡略の具合。どれもがうまいところで止まっている。
20世紀初頭の時代の表現の嗜好がありありと出ていて、そしてまた、その時代様式にのっかって、利用して、それが土台になって、この人だけがやりたかったことが、為されている、と感じた。
時代の枠にはまりきらない普遍的な強さが、あらわれていると思う。

女性表現と男性表現での温度差を感じる。女性を描くほうが断然好きだったんだろうな。
それにしても、入り口入ってから出口を出るまでずっと全部モディリアニの作品、っていうのは凄すぎる。
展示としても、大変な圧巻。



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大阪市立東洋陶磁美術館 受贈記念特別展「中国工芸の精華 沖正一郎コレクション-鼻煙壺1000展」


大阪市立の東洋陶磁美術館は、私が一番好きな美術館。

陶磁器をみるに最適な調光だし。
展示ケース内の台のカバーは、突出はしないけどしっかりと作品を際だたせる色味と質感。
そして作品を見るときにゆっくり肘をつくことができる、ケース前の台。
もちろん言うまでもないことだけれど、旧安宅コレクションの陶磁器が、すごくいい。

いまの企画展は、鼻煙壺。

・・鼻煙壺。そんな物があるなんて初めて知りました。
そしてそんな「鼻煙壺」を1000点以上も集めて、
そしてそして大阪市に寄付しちゃう人がいるなんて。
世の中、知らないことは多くてびっくりする。

展示は、これでもかこれでもかと大量の鼻煙壺。ちっちゃいものでも1000というのは凄い数だと実感。
全て19・20世紀の、中国での制作。中国のモダン・デザイン。
お金持ち様向けの作品なので、手間と材料にかけるものが並大抵じゃなくて、どれも宝石みたい。
眼福でした。

でも常設の北宋の白磁のほうが、良かった。



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2008年8月26日火曜日

京都国立近代美術館「〈日本画〉再考への序章 没後10年 下村良之介展」


とても尊敬している学芸員さんと世間話をする機会に恵まれて、
たまたまこの展示の話になりました。
「凄い良かった」の意見で合流し、
「やっぱり、展示は企画性と時代性だな―」という言葉に結着した。

ある「作品」や「モノ」を、見るにもっともふさわしい時期がある。
あるいは、その「作品」や「モノ」が、ある時までは、何の意味もなく見えたのが、
ある瞬間を迎えた途端に、怒濤の如く理解できるようになる。
それがいつ来るのか。それが読めるひとは、展覧会企画の天才かもしれない。

まあ、そんな夢みるような話はさておき。
この展覧会を見て一番思ったことは、「絵画って平面じゃないんだ」ということだった。
下村良之介は粘土を使って、もりあげて画面を作っているけど、
それは、もともとあった色面の厚みをより強調するようなものなんじゃないか。と、思った。

とにかくどの絵も力に溢れていて、圧倒されますが、
なかでも〈闘鶏屏風〉が、とりわけ印象に残りました。



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2008年8月19日火曜日

滋賀県立近代美術館「ファーブル昆虫記の世界」


滋賀県の近美には、ひと月かふた月に一度くらいの割合で行きます。
今回やってらっしゃる展示は、ファーブル。

いつも思うことですが、この美術館の展示は幅がひろい。
仏像あり、デザインあり、現代美術や日本画、近世絵画、建築あり。
ジャンルの垣根が無いのが、私的には好きです。
いつも意外感があるし、それに美術という場が基本的に、どんな分野の内容をも取り込んでしまうものなのだなということを実感できるから。

でもファーブル昆虫記を美術館で見るとは、思ってなかったな。
見た感想から言えば、「メルヘン」。
そして、丹念で細い昆虫スケッチの線に釘付け。
科学的なスケッチも、練達したこまやかな描写のものは美的作品になるのね。

そういえばむかし、理科の授業で「理科のスケッチは、図画工作のときとは違って、途切れない線ではっきりと陰影を付けずに描いてください。」と習った。
それって、ある種の日本画の、本画の線でもそうよね、切れない線ではっきりと陰影を付けずに描く。
写生って結局、「線」の洗練なのかしらね。科学・美術を問わず。




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2008年8月17日日曜日

原田の森ギャラリー「十点展」


原田の森ギャラリーに行ってきました。
初めて行ったのですけど、立派な建物で、雰囲気もさわやかな。立地も便利なところでした。

十点展。
tententen、と読ませていて、かわいいし、なるほど~とうなっちゃうナイスなネーミング。
十という数の、視覚的に静謐な雰囲気もいいな。
そしてなにより、各作家で10点も作品を見ることが出来るのはうれしい。
皆、同世代の日本画家。(そして私も同世代。)
どれも、安定して、破綻無くこなれたタッチの絵、淡く美しい華やかな色。

7人展、なのですが、そのなかでも寺井さんの作品がどうしても見たくて、行ってきました。
彼女の絵は、形のとりかた、色の使い方、構図、全部がとても好きで、
昔からとても憧れていたのです。
やはりその線は健在で、柔らかく大きく包み込むように描いている。
この質量のある柔らかさは、そんなにどこにでもあるような感じじゃないな、
普通には得難いようなものを持っている人だなあと思う。



・・いつも思うことなんだけど、日本画家の女性って、みんなとても綺麗なのね。
今日も、会場の作家さんの姿を見ながらつくづく思っていました。
顔とかだけじゃなく全身で、雰囲気ごと、きれい。
それは、日本画を描いてるから綺麗になるの? それとも綺麗だから日本画を描くのかな。
ずっとずっと不思議に思っていることなんだけど、まだ答がわからない。




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2008年8月3日日曜日

堂本印象美術館「祈りの形象―真理を求めて」


印象美術館は一年振りくらい。
ここに来る度つくづく思うのは、京都市の北の西って、市の西の南(猫かぶりの家があります)からは
距離に比してのアクセスがかなり悪いということ。
直線距離近いはずなのに、なんでこんなに遠い・・。

貧相な感想ですが「印象さんの観音さまは美人だ」。
そして信貴山成福院の障壁画が特別出陳されていました。林に鹿が行き交う図。
印象さんの障壁画のあるお寺の全国分布図がパネルされていた。いろんな所に描いてはるんや・・。
勉強になります。
高知の竹林寺にも描いてはるんね。


印象さんの、あの抽象的なぴょんぴょんした線をたっぷり見た後そとに出て、建物の外観を見ると
その線がまだいっぱいいっぱい壁に這っていて、見慣れすぎて目が痛くなった。




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京都・アートゾーン神楽岡「PORT DI STAMPA」


PORT DI STAMPA・・・版画の原点(港)みたいな意味らしい。
京都市芸大版画在学の6人展。

こちらへは初めて行ったのですけど、建物わかりやすくて広くて大きくて明るくて天井高くていいですね。
作品数は30点弱。点数が多くて、充実した展示。
版画で値頃な良い作品買いたい人は、ここに来たら喜んで買っちゃうかも知れません。

6人展なのですが、私的には中村桃子さんと堂東由佳さんが素敵です。

中村桃子さんの〈植木鉢女〉、〈地層女〉、〈岩男〉・・のシリーズ、
単純に自然の擬人化なのでも、人体変化の一種なのでもないところが、見ている目を引き留めてくれます。
黒い線の密集したかたまりの中に差し込まれた、ピンク色のほっそりしたスイートピーのかたちが、
絶妙に可憐。しかもその黒いかたまりが女の子の頭なんて、上手い。

堂東由佳さん。
関係無いかも知れないけど値段安くないですか。周りに合わせればもっと高くて良いのでは。
対になってる〈dead or arive cat〉と〈dead or arive bird〉が大作で、良いですね。
catの方は黒地に白で猫文様のバリエーションの反復。birdの方は白地に黒で鳥文様。
鳥の方、展示場所にマッチしていて特に素敵です。
遠目では、ひだまりの中でゆらゆら揺れる白レースの掛布。
繊細な陰影の襞かと思いきや、近目では結構シュールな鳥のイラスト。細かい鳥模様のかたちにバリエーションがある。
でも全部違う形というわけでもなく、同じ形が規則的に(どういう法則性かちょっと読めないけど)
反復されていて、画面全体にリズミカルな調子を生み出している。
この細かい模様の配分で全体の形態と色調を決めているのね。
細かい作業と大きな画面全体の作業との連動がきれい。



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京都市美術館 コレクション展第2期「色 — 響きと調べ」

京都市美のコレクション展を見てきました。

会場入ってすぐの壁に掛かっている絵が、なんか見たことあるような無いような絵で
いぶかしく思いながら近づいたら竹内浩一先生の絵だった。
そういえば画集で見たことあったっけ。珍しく動物画ではないので最初は違和感ありましたが、
タッチは不変。うつろうしみのような色影が素敵です。

一室めの作品がどれも良すぎて泣けました。

栖鳳の〈雄風〉、実物は初見。図版を見ただけでも変わった絵だと思っていたけど
今回見た感想も、「変わってる」。写実的とは言い難いのに、空想ではないという感じ。
そして筆遣いがいろいろ込み入っていて、どう描いているのかがいまいち分からない。
テクニシャンなんだなあ。

菊池契月の〈紫騮〉。張り詰めた空気が耳に響いてきそう。
こういう絵のことを象徴的ていうのかな。と、見ていてふと思った。練りに練られた構図。

紫峰の〈奈良の森〉、紫峰らしさ全開で気持ちいい。
入道雲が、ふにゃあと伸びて行くような表現の木の幹。

小野竹喬〈夕雲〉。好みのど真ん中の絵は「凄く好きです良かった」
とかいう紋切り型の表現しか出来ないのが悔しいのだけど、
やっぱり凄く良いとしか言えない。

皆川月華の〈彩海魚之図〉は昭和初期の派手モダン。
着ればもうちょっと落ち着いた感じになるのかも知れないけど、着るのは相当気合い要りますでしょうね。
帯はどんなのをあわせるんだろうか・・。
京都市美の染織コレクション展が見たいなあ。




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2008年8月1日金曜日

京都国立博物館 常設展示

久しぶりに京博に行って参りました。

染織コーナーで「夏の着物」特集をやってらっしゃる。絽の着物が涼しげ。
一番奥のケースで大正昭和の半襟を数点出してらっしゃいましたが
花模様が細かく刺繍されて、かわいい。
図録では何回か見たことがある、宝尽くし文様の腰巻が出ていました。
実物とイメージが違って、ちょっとびっくり。
染織品の色味は、写真では再現しにくいものだなあと改めて実感。

絵画は絵巻が面白くて、釘付け。
とくに、病草紙。病草紙をこんなにじっくり見るのは初めてだったかもしれません。
図様はえげつないのに線は流麗で、変な感じだ。

あと、応挙の龍門図三幅対は夏らしいさわやかさ。
海北友松の龍図(建仁寺)はもうだいぶお馴染みだけど、見る度に
やっぱり掛軸装は落ちつかへん・・と思う。
雲谷等顔の帰去来図襖(普門院)は状態良くないけど、「逸品」。

龍馬特集は猫に小判でした。屏風絵に飛んでる血しぶきに「おおお」となるくらいかな。



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